「佐藤さん」(片川優子)

登場人物が不思議な魅力と現実的な息遣いを持っている

「佐藤さん」(片川優子)講談社文庫

「佐藤さん」講談社文庫

「僕」は佐藤さんを恐れている。
それは別に佐藤さんが
暴力的だとか不良だとかと
いうわけではない。
佐藤さんはいたって
普通の女の子で、
誰にでも優しい。でも、
「僕」には見えてしまうのである。
佐藤さんの
後ろについているモノが…。

そう、
「僕」に見えてしまうものというのは
もちろん幽霊です。
でもオカルトでもなければ
SFでもありません。
高校1年生の「僕」と佐藤さん、
クラスメイトの志村くんと田川さんの
微妙な人間関係に、
佐藤さんの守護霊の安土さんが
絶妙に絡んでくる明るい物語です。
読み始めると、
安っぽいラブコメのような
印象を受けますが、
なぜかページをめくる手が
止まりませんでした。
それは登場人物たちが
不思議な魅力と現実的な息遣いを
持っているからです。

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今日のオススメ!

霊視できる主人公・「僕」・佐伯くん。
中学生時代にいじめられた経験を持つ、
かなり引っ込み思案の男の子です。
でも、佐藤さんはそんな佐伯くんの
純粋で人を信じるところに
惹かれているのです。
そして、佐伯くんはそんな佐藤さんの
気持ちに応えようとします。
自分の過去を乗り越えるために、
かつて自分をいじめた相手に
会いに行き、決着をつけるのです
(暴力でではありません)。

幽霊に取り憑かれやすい佐藤さん。
毅然とした強さを持っている
女の子です。
でも、実の母親から
虐待された過去を持ち、
それを隠すために
学校ではおとなしい自分を
演じています。
佐伯くんと出会い、佐伯くんに救われ、
そして弱い自分を克服した佐伯くんに
勇気をもらい、
自分も過去と向き合う
決心をするのです。

佐藤さんの守護霊・安土さん。
頼りなさそうでいて、
実は大人として
佐藤さんと佐伯くんを
しっかり見守っています。
人生の先輩として、
さりげなくアドバイスをしています。
ちょっと御節介好きの
お兄さん的存在です(幽霊なので
存在していないのでしょうが)。

そうです。本作品は、
オカルトでもSFでもラブコメでもなく、
成長物語なのです。
それも相思相愛の少年少女が、
お互いから影響を受け合い、
ともに成長するという、
きわめて健全な物語なのです。
登場するのは高校生
(幽霊を除いて)なのですが、
変にスレたところがなく、
その辺に普通にいそうな
現実感(幽霊も含めて!)があります。

この作品を書いた
作者・片川優子とはどんな人か?
なんと執筆当時中学3年生!
作者15歳の
瑞々しいデビュー作でした。
驚きです。
中学生にぜひ薦めたい一冊です。

(2019.10.19)

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